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あこがれの色を求めて(2001/3/1)

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あこがれの色を求めて
- 秋月の草木染め工房・夢細工 -
工房・夢細工
染料の基となる材料
護岸工事されていない秋月の小川
澄みきった秋月の水

夢細工の桜染めは、草木染めのコーナーからお求めいただけます。

20年ほど前、東京で広告カメラマンをしていた小室さんは故・伴淳三郎(喜劇俳優)の写真のロケで徳島を訪れていた。その日は雨が降ったため、ロケは中止されることになった。何もすることがないので、二人は街を散歩することにした。その途中、伴淳三郎が草木染工房を見つけ、誘われるままにその店を覗いてみることになった。

当時、広告カメラマンとして「色」にこだわりを持っていた小室さんは、草木染の色を見て感動した。こんなに美しい色が出せるのであれば、自分でも染めてみたい。その感動から、草木染の本を買って試してみるが、実際にやってみると、なかなかきれいな色が出せない。徳島で見たあの色は化学染料を使って染めたのではないか。そんな疑いを持つようになり、小室さんはいつしか草木染をやめてしまった。

しばらくして、別のロケで滋賀県の彦根城を訪れたときのことだった。彦根城博物館で能の衣装を見ることができた。あざやかな色を見ているうち、徳島で見た草木染のことを思い出した。ひょっとして、あれは本物の草木染だったのではないか。単に自分の技術が未熟なだけだったのではないか。

当時の小室さんの草木染に対するイメージは、それほどよくなかったという。草木染と言えば、くすんだ色のものしかなくて、澄みきった色のものがあるとは考えられなかった。だが、博物館に飾られていた何百年前に作られた能の衣装が化学染料で染められているはずもなかった。自分の技術が足りなかったことに気づいた小室さんは、その後カメラマンをやめて草木染の世界に入っていく。


■あこがれの色を求めて

小室さんは、染料会社が草木染工房に売っている染料を使って染めたものを本当の草木染とは認めていない。染料会社が草木染工房に売っている染料は、自然の草木からのみ抽出された染料ではないという確信があるからだ。自然の草木を原料とした染料を使って、きれいな色が出せるようになるまでは経験と根気が必要だ。しかし染料会社の染料を使うと簡単にきれいな色に染めることができた。

メーカーの染料を使って染めたものは本物の草木染ではないという思いから、染料の基となる自然の草木を自分で集めることから始める。欲しい色を出すために必要な草木があれば、海外からでも取り寄せた。

また、技術を磨くため、日本各地の草木染の店を回った。それでわかったことは、本当の草木染を置いている店は非常に少ないということだった。草木染と言いつつ、染料会社の染料をそのまま使って草木染として売っている店も結構多いということがわかった。また、店自体がそうしたことを気づかずに売っていることも・・・。


■桜染
夢細工では、他の工房には置いていないさまざまな色の草木染が創作されている。なかでも、桜の小枝を原料にした桜染は、他では手に入れることの難しい作品だ。「あざやかな色の桜染を、偶然でなく、安定して染めることのできる工房は他にないでしょう」こう言い切るところに自分の技術に対する小室さんの自信がうかがえる。

桜染と呼ばれるものは昔からあったそうだ。ただ、江戸時代までに「桜染」と言われていたものは、紅花や茜などを使ったもので、桜から抽出した色ではなかったと言われている。

「桜の色は、自らが一歩ひくことで人を引き立たせる色なんです」自らひくことでその存在感を際だたせることができる色。身に着けた人を桜に染めさせる色。押しの強い梅の色とは違う、そうした桜の有り様に何より惹かれる、と小室さんは言う。


■自然の色が持つ力
赤い下着をつけたら健康になるという話がある。が、これは草木染だから効果があるのであって、単に「赤い」下着をつけるから良いのではない。茜染の下着をつければ、茜の色と茜が元々持っている力が人にいい影響を与えるのだ。これは、ジーンズの色が本来なぜ青いか、という有名な話と同じことだ。

自然の色には、そうした「人を癒す力がある」という。草木の色は自然の力をそのまま受け継いでいる。それを身に着けることで、そこから人はその力を受け取ることができる。これは化学染料が持っていない力だ。もちろん、化学染料であっても「色」の組み合わせなどが人に与える精神的な効果を小室さんは否定するわけではない。しかし化学染料には草木が本来持っている治癒力まではないだろう、と。


■使命としての仕事
東京で広告カメラマンをしていたときは心身共に疲れ切っていた。それを救ってくれたのが草木染だった。自分が感動した色、安らぎを感じた自然の色、自分が感動したのと同じ体験を多くの人に感じてもらいたい。そして、何より、伝統の技を残したい。最初に能の衣装を見て自分が感動したような色を染めるための技術は残さなければならない。それが自分の使命だ、と。でも「本当はサラリーマンやっているより、自然の中で好きな仕事をしたいというのが本音なんですよ」

自分が好きなことをやりつつ、それだけでは終わらない。それが同時に社会とつながっていること。その意識が人に勇気を与え、社会を豊かなものにする。何をやるにしてもそのことが大事なことだろう。

夢工房では、桜染めの染料は1月から3月にかけて作られるそうだ。ちょうどこの時期、工房では桜染を作るための染料が作られている。
(取材日・2001年1月)

※夢細工の桜染めは、剪定の際に切り落とされた桜の小枝が原料です。